強い腰痛の時は施術を受けるべき?それとも痛みが落ち着くまで待つべき?

本日ご相談に訪れた男性のお話です。

この方は普段デスクワーク中心のお仕事をされていますが、3日前に慣れない作業をされたそうです。

その作業とは「田植え」。

普段は長時間座って仕事をしているため、前かがみ姿勢を繰り返しながら田んぼの中を移動する動作は身体にとって大きな負担だったのでしょう。

作業当日は多少の違和感程度だったそうですが、翌朝から腰に痛みが出始め、2日目の朝には起き上がれないほどの状態になったとのこと。

ご本人の表現では、

「痛みレベルを10段階で表すと10」

とのことでした。

そして3日目の本日も、

「10段階中8~9くらいの痛み」

が続いているそうです。

特に右腰に強い痛みがあり、無意識に身体を傾けたり、痛みが出ない姿勢を探したりしながら生活しているとのことでした。

「施術を受けて悪化しませんか?」

今回のご相談で最も気になっていたのが、

「今は痛みを逃がす姿勢を取っている」

という点でした。

人間の身体は痛みが出ると、その痛みを避けるために自然と姿勢を変えます。

これを当院では「退避姿勢」と呼んでいます。

例えば、

・身体を左へ傾ける
・腰を曲げたままにする
・右足へ体重をかけない
・歩幅を小さくする

などです。

これは身体が自分自身を守るための防御反応でもあります。

そのため相談者の方は、

「今の姿勢だから何とか耐えられている」

と感じていました。

そして次のような疑問を持たれていました。

「もし整体で身体を真っすぐに戻したらどうなるんでしょう?」

「今は痛みを逃がせているのに、真っすぐにされたら痛みが戻るのでは?」

「むしろ今より痛みが強くなる可能性もありますか?」

これは非常に自然な疑問です。

実際に強い腰痛を経験されたことがある方なら、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

当院の考え方

この質問に対して、私は正直にお伝えしました。

「施術を受けるべきです」

とも、

「絶対に大丈夫です」

とも言いませんでした。

なぜなら、身体は実際に検査と施術を行ってみなければ分からない部分があるからです。

また最終的に施術を受けるかどうかを決めるのは、ご本人だからです。

当院では施術を強要することはありません。

不安な状態で無理に施術を受けても納得感がありませんし、ご本人が納得した上で身体と向き合うことが大切だと考えています。

そのため、

「判断はご自身に委ねます」

とお伝えしました。

ただし身体では別のことが起きています

しかし一方で、どうしてもお伝えしておきたいことがありました。

それは、

「退避姿勢による新たな負担」

です。

現在は右腰が痛いため、身体は無意識に右腰を守っています。

しかし守るためには、どこか別の場所が頑張らなければなりません。

実際に身体を想像してみると、

・左中殿筋
・左腰背部
・左鼠径部周辺
・左外側広筋
・右腰から背中
・右肩甲骨の下部

などに負担が集中している可能性があります。

本人は右腰しか気になっていませんが、身体全体で見ると既に複数の部位が代償動作を始めています。

つまり、

「右腰を守るために他の場所が働き続けている」

状態です。

実際に身体はどのような姿勢になっていたのか?

今回ご相談いただいた方は、右腰の強い痛みを避けるために、無意識のうちに特徴的な退避姿勢を取っていました。

立った状態を観察すると、

  • 体重は左足に約7割、右足に約3割
  • 左足は外側へ向けるように回旋
  • 上半身は左へ傾斜
  • 首から頭は反対に右へ傾斜
  • 左肩は右肩より内側へ巻き込む
  • 左肩甲骨は右より下方へ下制
  • 右側の腸骨稜は高く持ち上がる
  • 骨盤は後傾
  • 左の前上腸骨棘(ASIS)は右より低い位置
  • 骨盤と上半身はともに左方向へ回旋

という状態でした。

文章だけだと複雑に感じるかもしれませんが、一言で表現すると、

「右腰に荷重や伸張ストレスが加わらないよう、身体全体を左へ逃がしている状態」

とも言えます。


身体は右腰を守るために全身を使っていた

興味深いのは、痛みを感じている場所は右腰だけなのに、実際には全身が協力して右腰を守ろうとしていることです。

右腰に痛みがある場合、

身体は本能的にその部分を圧迫したり伸ばしたりする動作を避けようとします。

その結果、

身体の重心を左足へ移動させ、

骨盤を左へずらし、

上半身も左へ傾け、

さらに頭部を右へ傾けてバランスを取る、

という一連の代償反応が起こります。

本人は意識しているわけではありません。

脳が

「この姿勢なら痛みが少ない」

と判断し、自動的に採用している防御反応なのです。


しかし退避姿勢には代償が生まれる

問題はここからです。

右腰を守ることには成功していますが、その代わりに別の組織へ大きな負担が集中します。

今回の姿勢から考えると、

左中殿筋

左足で体重の大部分を支えるため常時緊張状態になります。

左腰背部

左側へ身体を傾け続けるため筋肉が働き続けます。

左鼠径部

骨盤の偏位と回旋によって股関節前面へ負担が集中します。

左外側広筋

左脚支持を続けるため過剰に活動します。

右背部~右肩甲骨周囲

頭部の位置を保つため持続的な緊張が生じます。

頸部

左へ傾いた体幹に対し頭を水平に保つため右側頸部が緊張します。


痛みが減った後に起こりやすいこと

こうした退避姿勢を数日から数週間続けると、

最初の右腰痛が落ち着いた頃に、

今度は

「左のお尻が痛い」

「左の股関節が気になる」

「背中が張る」

「肩甲骨の下が痛い」

という訴えが出てくることがあります。

患者さんからすると、

「新しい症状が増えた」

ように感じます。

しかし身体全体で見ると、

右腰を守るために働き続けていた部位が疲労し始めただけ、

という見方もできます。


当院が見るのは痛みの場所だけではありません

腰痛があると、どうしても痛い場所に意識が向きます。

しかし身体は部分ではなく一つのシステムとして働いています。

今回のケースでも、

右腰だけを見るのではなく、

重心位置

骨盤の傾き

体幹の側屈

肩甲帯の高さ

頸部のバランス

歩行時の荷重

などを総合的に評価することで、

身体が現在どのような戦略で痛みを回避しているのかが見えてきます。

そして、その代償によってどこへ負担が集まっているのかも予測できるようになります。

腰痛を「腰だけの問題」として考えるのではなく、身体全体のバランスの問題として捉えることが、回復への大切な一歩になるのではないでしょうか。

痛みが引いた後に起きること

こうしたケースではよくあることなのですが、

「腰の痛みが少し落ち着いた」

と思った頃に、

今度は別の場所が気になり始めます。

例えば、

「腰は楽になったけど左のお尻が張る」

「股関節の前側が気になる」

「背中が重い」

「肩甲骨の下が痛い」

という状態です。

患者さん自身は、

「新しい症状が出た」

と思われることが多いのですが、実際には痛みを避けるために使い続けていた部位が疲労して表面化してきただけというケースも少なくありません。

つまり、

最初の腰痛だけを見ていると、

身体全体で何が起きているのかを見落としてしまうのです。

痛みが強い時は施術を受けるべき?

これは非常に難しい質問です。

なぜなら正解は一つではないからです。

痛みが強い時期に施術を受けて回復が早まる方もいます。

一方で、まずは安静を優先した方が良いケースもあります。

重要なのは、

「今の身体で何が起きているか」

を把握することです。

身体がどのようなバランスになっているのか。

どこが過剰に働いているのか。

どこが動かなくなっているのか。

どこが代償しているのか。

これらを確認することで、その方に合った対応が見えてきます。

今回の相談者さんの選択

今回の相談者さんは、

「もう少し痛みが落ち着いてから身体を整えたい」

という判断をされました。

そのため本日は施術を行わず帰院されました。

私はその選択も十分にありだと思っています。

大切なのは、自分自身が納得して選択することです。

ただし、その期間も身体は常に変化しています。

痛みが落ち着いた時に、

「腰は良くなったけど他が気になる」

という状態になることもあります。

もしそうなった時は、腰だけではなく身体全体のバランスという視点で見直してみることをおすすめします。

まとめ

腰痛は痛い場所だけに原因があるとは限りません。

特に急性腰痛では、身体が痛みを避けるために様々な代償動作を行います。

その結果、腰以外の部位にも負担が蓄積していきます。

「今は痛くないから大丈夫」

ではなく、

「今は他の場所が頑張ってくれているだけかもしれない」

という見方も大切です。

もし現在、痛みをかばいながら生活している方がいましたら、一度ご自身の姿勢や身体の使い方にも目を向けてみてください。

身体は常に全体でバランスを取ろうとしています。

そのバランスの崩れを整えることが、結果として回復への近道になる場合もあります。

神泉カイロプラクティック いわもと整体院